男木島3・女木島6

瀬戸内国際芸術祭2016夏会期に、男木島女木島へ行ったときのことです。

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朝8時、始発の船で男木島へ。春会期に訪れた際は船が激混みだったので、一本早い船を使ってみました。それでも人は多かったですが、座る余裕はありました。

男木島は他の島に比べて作品の鑑賞スタート時刻が早く、9:30には鑑賞することができます。今年は作品の場所が割とまとまっていて、男木島は楽に回遊できました。展示作品は前回の芸術祭とほぼ変わりなかったのですが、2010年・2013年にはあまりピンとこなかった「アキノリウム(松本秋則)」が今回はグッときました。竹細工のオブジェが風で動き、屋根裏部屋でポロポロと音楽を奏でる作品です。疲れ切った体にポロポロ音が染みわたります。

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新作では「部屋の中の部屋(大岩オスカール)」「カレードスコープ ブラック&ホワイト(川島猛とドリームフレンズ)」が良かったです。「部屋の中の部屋」は、外見は普通の民家なのですが、玄関で靴を脱いで廊下を直角に曲がって部屋に入ると、内部が90度回転した部屋にたどり着きます。90度回転した部屋で回転した掛け軸を見るのは、なんというかバカボン的なマンガ世界にいるような感じになりました。展示室が奥まっているのも「部屋の中の部屋」というタイトルに沿っているようで良かったです。室内が非常に狭いので6名ずつの人数制限になっているようです。早い時間帯で行けば独り占めできるのでオススメです。

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梅乃湯旅館。以前は小学校でやっていた「昭和40年会」が今回は旅館で展示をやっています。有馬純寿さんのネコザメに説教を聴かせる作品が良かったです。会田誠さんの滞在制作、極度の緊張で長居できませんでしたが、作品に向き合う表情が真剣で、以前に鞆の津ミュージアムのトークイベントで拝見した時とはまた違う一面を見ることができた気分です。旅館自体も味のある建物で、上り下りする階段が複数あり、部屋も階段もそれぞれが彼方此方を向いているのが印象的でした。

11時に到着の船で女木島へ。男木島に降り立つ吉高由里子さんを見ました。

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女木島では前回見逃した作品+夏から始まる作品を鑑賞。西浦地区の作品を見るために「OKバス」に乗り込んだのですが、常軌を逸した錆び具合に一抹の不安を感じました。窓はデフォルトで空いていて、椅子には手すりすら存在しません。しばらくすると若いお兄さんがやってきて運転席に座り、西浦地区へのドライブがスタート。年季の入ったバスが細い山道を爆走します。スピーカーから流れる音楽は、鬼の館で公開されていた映像作品とリンクしているのだと思いますが、バスから発せられるノイズ音と蝉の声でほとんど聞こえません。途中地元民の運転する軽四自動車と正面から鉢合わせたり、バス同士が山道でギリギリの交わし合いを繰り広げたりと、なかなかに怒りのデス・ロードでした。

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で、たどり着いた西浦地区にある唯一の作品「西浦の塔 OKタワー(ナウィン・ラワンチャイクン+ナウィン・プロダクション)」。木製パネルでできた塔に島民や女木島のイメージがタイの昔の映画ポスターよろしく描かれた作品。嘘みたいにでかくて笑ってしまいました。この作品を見た後は、よほどの理由がない限り、来たバスに乗って帰ります。バスは15分間待ってくれるので、15分間鑑賞できます。「15分の鑑賞時間」で咄嗟に直島の「きんざ」を思い出しましたが、個人的にはこちらのオープンな感じも好きです。

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周囲にはお店もなく、少し離れたところに自動販売機が一つあるだけ。運転手のお兄さん曰く、その自販機ですら「作品と同時期に設置された」そうです。
帰りの道中、バスが少し小高い場所で停車しました。その場所は作品の全景が見える位置で「自由に写真を撮ってください」とのことでした。帰り道にボンヤリと「ボロボロのバス、若干恐怖を感じる運転、これら全てを体験する形の作品なのでは」という考えが浮かびましたが、帰りの道も勿論恐ろしく、あまり考えがまとまらないうちに鬼ヶ島に着いてしまいました。

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鬼ヶ島大洞窟で下車し、OKバスに別れを告げて大洞窟内の作品鑑賞。カオス*ラウンジによる作品が大洞窟内の展示に混ざり合っています。どこからどこまでが作品なのか、入ってすぐにある大型ゴミやひっくり返った看板は既存のものなのか作品なのか、何もわからないまま鑑賞します。鬼ヶ島大洞窟の内容がもともとカオスなので、そこに手を加えてますますカオスになっている光景が楽しかったですが、芸術祭目当てで来ていない観光客が、展示物に紛れて自己主張する緑の男を見て、どのように感じたかはわかりません。
「鬼に踏まれた鬼」という作品(数あるカオス*ラウンジの作品の中でおそらくコレだけキャプションが付いていた)を見た夫婦が「作品はこれだけなのかねえ」と言ってました。違うと思います。

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帰りのバスはしばらく来なさそうで、下り坂だし歩いて港まで…と思っていたら割とすぐすれ違いました。帰りの道中は死の危険を感じるほど暑かったので、乗っておけばよかったなーと後悔しました。